VJと家庭

あれだけ炎上が確実視されていたこのイベントもなんとか無事に準備が進み,1日目が終わった.VJとしての今回のイベントの準備の期間のほとんどは,合計長さ25メートルのオーガンジーの布にアイロンをかけたり,それを1枚のスクリーンにするために吊るしてハンディミシンで塗ったりしていた.中学校の家庭科でクラスで1番の成績だったことが,こんなところで役に立つとはと思いながら,粛々とハンディミシンで縫い続けていた.

もともと3D CGやプログラミングに興味があって始めたVJが,ある程度やりこんでくると裁縫や大工仕事などのフィジカルな要素に凝り始めたのは面白い.映像を作ることと同じくらい,映像をどのように現実世界に持ってくるかということが重要になるのだけれど,それについて十分には語られていないし情報の蓄積も少ない.

コンピュータを用いたものを含めて,VJと技術についての情報は多々あるけれど,VJと家庭について話すことは少ないような気がする.もっぱらVJソフトや「演出の哲学」の話ばかりで,ミシンの使い方やアイロンの掛け方に注目する人はほとんどいないようだ.

そもそも家庭科で用いている裁縫や調理だって技術のはずであって,技術・家庭という分け方は全く恣意的なものではある.しかし,年を経ても「技術」に特化した領域で活動している時に,「家庭」的なものを導入するという発想がそもそも出てこない場合が多いような気がしているのだ.なんとなくだけれど,技術は客観的に評価可能な幾つかのパラメータを最適化して一つの解を得ようとしているような気がしていて,家庭には多様な手法を身につけることそれ自体が目的になっているような気がしているのだ.

まだこの区別は自分の中ではっきりしていないので,もう少し練ってみたいと思うが,今日はもう眠いので,また次回にすることにしよう.